ハラスメント相談窓口はどこに置く?~中小企業が失敗しない設置方法を社労士が解説~

こんにちは、社会保険労務士の飯村です。

企業には、パワハラ・セクハラなどのハラスメントについて、相談窓口の設置と周知が義務付けられています。
厚生労働省の最新の調査によれば、

  • 社内のみ … 55.7%
  • 社内+社外の併用 … 41.2%
  • 社外のみ … 3.0%

という結果で、企業規模が大きいほど社外窓口を併設する割合が高いことが分かりました。

今回の記事では、中小企業で悩みがちなハラスメント相談窓口の設置場所について、社内窓口・社外窓口のメリットと注意点、相談対応に必要な法律知識や傾聴スキルを、社労士が分かりやすく解説します。

👉参考:厚生労働省 職場のハラスメントに関する実態調査について

👉参考:厚生労働省 令和5年度 厚生労働省委託事業職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版) (本記事では「調査」と表記)

■ 中小企業で起こりやすい「相談できない」という問題

中小企業では、相談窓口を社内に置いた場合、次のような不安が従業員に生まれる恐れがあります。

経営者に知られてしまう懸念

職場が小さいほど、「誰が相談したのか」が推測されやすく、相談をためらう大きな理由になります。

中小企業では、役員、あるいは代表取締役自身が相談窓口、というケースを多く見かけます。

役員・代表取締役が相談窓口になる場合の主なデメリット

① 相談のハードルが高くなる
役員や社長に直接相談すること自体が心理的負担となり、被害があっても「言い出せない」「我慢してしまう」ケースが多くなります。

② 客観性を保ちにくい
経営判断や人事権を持つ立場であるため、無意識に会社側・管理側の視点が入りやすく、相談者が「公平に扱われない」と感じることがあります。

③ 「相談しても変わらない」という不信感が生まれやすい
相談相手が最終決定権者であるため、改善が進まないと「結局、会社は守ってくれない」という印象を与えやすくなります。

担当者の専門性・人数の不足

厚生労働省の調査でも課題として、

  • 「ハラスメントかどうかの判断が難しい」(最多)
  • 「適切な人材が社内にいない」
  • 「プライバシーを守る体制づくりが難しい」
    などが多く挙げられています。

個人情報保護への不安

相談内容が社内で共有される範囲が曖昧だと、情報管理体制への不安は相談の抑制につながります。

■ 相談窓口担当者に求められる知識・スキル

厚労省調査(2023)や指針から、相談窓口には次の能力が必要だと示されています。

① 法律知識

相談窓口は法的判断をする場ではありませんが、次の基礎知識は不可欠です。

  • パワハラ防止法(労働施策総合推進法)
  • 男女雇用機会均等法(セクハラ関連)
  • 育児・介護休業法(マタハラ・パタハラ関連)
  • 労働契約法・就業規則との関係
  • 不利益取扱い禁止の原則
  • 事実確認の手順(聞き取り・記録保持など)

これらを理解しておかないと、「相談を受けたが、どこまで対応すべきか分からない」という事態が起こり、二次被害を招く危険があります。

② 傾聴スキル

相談窓口担当者には、特に次のスキルが求められます。

  • 否定しない・遮らない「傾聴」
  • 感情の受け止め(不安・怒り・ショック)
  • 事実と感情を切り分け、丁寧に整理する力
  • 判断を急がず、中立性を保つ姿勢
  • 相談者のペースに合わせる対応

調査では、窓口担当者が「相談者の要望を聞かず何も対応しなかった」というケースが多く、問題になっています。
傾聴スキルの有無が、相談者にとっての再被害を防ぎます。

③ プライバシー保護の理解と運用

調査でも課題として上位に挙がったのが、

  • プライバシーの確保の難しさ
  • 情報管理体制の弱さ

相談者の情報管理は最重要であり、「共有する範囲・方法」「記録の保存方法」などは、事前に明確なルールが必要です。

④ 初期対応の正しさ

相談の初期対応で必要なのは次の3つです。

  1. 事実関係の丁寧な整理(時系列・言動・状況)
  2. 緊急性の判断(安全配慮義務に関わる)
  3. 適切な窓口・部署への引き継ぎ

■ 社外窓口を併設するメリット

中小企業が相談しやすさをつくる最も現実的な手段は、社外窓口(社労士など)を併設することです。

社内窓口には、社内の事情を理解している利点がありますが、社外窓口には以下のメリットがあります。

匿名性と独立性を担保

「社内には言いにくい」相談を受け止める役割を担い、安心して声を上げられる環境をつくります。

専門家による助言

調査でも課題として最も多い「ハラスメントかどうかの判断が難しい」という点を、専門知識や相談経験のある専門家が客観的に整理します。

社内の負担を軽減

人員や経験が不足しがちな中小企業でも、現実的に運用できる体制を構築できます。

会社の本気度が伝わる

厚生労働省の調査によると、「相談窓口の設置と周知」は約7割以上の企業が実施していると回答しているにもかかわらず、労働者側調査では、「勤務先がハラスメントの予防・解決のための取組を行っている」と答えたのは、41.8%に留まりました。

取組を行っているのに、認知されていない状況です。

外部窓口を設置し、きちんと周知することで、ハラスメント対策を行う会社の本気度を伝えることが出来ます。

■ 中小企業が目指すべき相談窓口の形

● 社内窓口:社内の事情を理解する利点

● 社外窓口:匿名性と独立性を担保し、専門家の知見を活用

この 二つの窓口を併設する体制が最も実効性が高く、調査でも大企業を中心に広がっています。

特に中小企業では、

  • 情報管理の不安を減らし
  • 専門知識不足を補い
  • 相談しやすさを高める

というメリットが大きく、導入効果は非常に高いといえます。

調査では、勤務先によるハラスメントの認定については、パワハラ、セクハラともに、「ハラスメントがあったともなかったとも判断せずあいまいなままだった」(それぞれ 61.4%、47.5%)が最も高くなっています。

パワハラと認定されたのは18.8%、セクハラは30%です。

認定されない結末になることを考えると、初期対応で、いかに相談者に寄り添いかつ中立を保てるか、が重要となります。

■ まとめ ― 相談しやすさは、職場の信頼をつくる

ハラスメント防止の目的は、「窓口を設けること」だけではなく、相談できる職場をつくることです。

専門家の知識と外部性を活用しながら、従業員が安心して声を上げられる仕組みを整えることが、結果として企業の信頼性を高め、離職防止にもつながります。

中小企業の実情に合わせた相談窓口の整備については、社会保険労務士としてサポートできますので、お気軽にご相談ください。

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