【保存版】初めて人を雇うときに必要な手続きと労働法の基礎知識|開業したての経営者向けガイド

はじめに:初めての「雇用」で戸惑う経営者の方へ

こんにちは。社会保険労務士の飯村です。
開業から少し経ち、「そろそろ人を雇いたい」と思ったとき、多くの経営者の方が悩まれるのが、労働法と手続きの壁です。

「何から始めたらいいの?」「どこに届け出るの?」


そんな疑問にお答えするために、今回は初めて従業員を雇うときに必要な手続き知っておくべき労働法の基本について、社会保険労務士の視点でやさしくまとめました。

① 労働条件通知書・雇用契約書の作成【労働基準法の基本】

まず最初に行うべきは、労働条件を文書で明示することです。
労働基準法第15条では、賃金・労働時間・休日・契約期間などを労働条件通知書で交付する義務があります。

✅ 口約束ではNG。必ず書面等で条件を明示
✅ テンプレートを使う場合も、勤務形態に合わせて修正

この書面が、後々のトラブルを防ぐ「証拠」となります。

労働法とは、労働基準法(労基法。よく聞く法律)や労働契約法、最低賃金法など、労働に関する様々な法律の総称です。事業主と労働者の雇用に関するルールなどが定められています。

労働条件通知書は、事業主から労働者への一方的な通知。雇用契約書は労使双方の合意(署名押印)が必要です。後々のトラブルを防ぐために、労働条件通知書の内容を網羅した雇用契約書の締結がおすすめです。

👉参照 厚生労働省:採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。

👉参照 厚生労働省:令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます

② 労働保険(労災・雇用保険)への加入手続き

パート・正社員問わず、従業員を1人でも雇えば、労災保険の加入が義務になります。

  • 労災保険関係成立届:事業開始から10日以内に労働基準監督署へ提出
  • 概算保険料申告書:成立後50日以内に提出

また、週20時間以上・31日以上雇用予定の従業員の場合は、雇用保険の加入手続きが必要です。
ハローワークにて

  • 適用事業所設置届
  • 被保険者資格取得届
    を提出します。
労働保険とは労災保険と雇用保険の総称。労災保険は全額事業主負担、仕事中のケガや病気に備えます。雇用保険は事業主と労働者が保険料を分担、育児・介護休業、失業時に給付制度があります。

👉参照 厚生労働省:事業主のみなさまへ 労働保険の成立手続はおすみですか

👉参照 岩手労働局:新規に事業を開始された事業主の皆様へ

③ 社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入

法人は、社長1人でも社会保険への加入が必要です。
個人事業主の場合(一部の業種を除く)も、所定労働時間が正社員の4分の3以上の従業員を雇うと、加入義務が発生します。
(従業員50名以下の場合)

手続きは年金事務所(日本年金機構)で行います。
必要書類は

  • 新規適用届
  • 被保険者資格取得届
    など。

社会保険は、従業員の安心につながるだけでなく、会社の信頼度アップにもつながります。

会社の健康保険に入ることで、傷病手当金や出産手当金などを従業員はもらうことが出来ます。厚生年金保険は、老後や障害を負った時の生活保障になります。保険料は労使折半です。

👉参照 日本年金機構:健康保険・厚生年金保険 新規加入に必要な書類一覧

👉参照 厚生労働省:社会保険適用拡大対象となる事業所・従業員について

④ 就業規則の作成と届け出(常時10人以上)

従業員が常時10人以上になった場合、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出なければなりません。

ただし、10人未満の事業所でも、

  • 勤務時間
  • 休日・休暇
  • 給与の支払い方法
    といった基本ルールを簡易版として文書化しておくと安心です。
就業規則とは、会社で働くうえでのルールをまとめた社内規程。労働時間・休暇・賃金などを明確にし、従業員と会社の双方が安心して働ける職場づくりに役立ちます。
絶対的必要記載事項(必ず記載)と相対的必要記載事項(定めるなら記載)があります。

👉参照 東京労働局:就業規則作成の手引き

👉参照 厚生労働省:モデル就業規則について

⑤ 給与・勤怠管理と36協定の届け出

労働基準法では、1日8時間・週40時間を超えて働かせる場合、36協定(時間外・休日労働に関する協定)を締結して届け出る必要があります。

また、給与支払いでは

  • 所得税の源泉徴収・納付
  • 住民税の特別徴収
    も義務です。

勤怠記録はタイムカードや勤怠システムで管理し、「客観的に確認できる記録」を残すようにしましょう。

1日8時間・週40時間を超えて働かせる場合は割増賃金の支払いが必要です。法定休日深夜に働く場合も割増賃金を支払います。トラブルになりやすいため、事前に必ず確認しましょう

【正しい給与計算は信頼の第一歩】給与計算の誤りは、従業員の不信感につながる大きな原因です。正確な勤怠管理と適切な支給は、従業員との信頼関係を築くための基本です。

👉参照 厚生労働省:時間外労働の上限規制

👉参照 東京労働局:時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)

👉参照 東京労働局:しっかりマスター 割増賃金編

⑥ 雇用トラブルを防ぐ経営者の心構え

初めて人を雇うと、想定外の出来事が起こるものです。
採用時の説明不足や曖昧な取り決めが原因で、後に信頼関係が崩れることもあります。

💡 ポイントは「最初にルールを決め、記録を残す」こと。
それが経営者と従業員の双方を守ります。

まとめ:初めての雇用で失敗しないために

初めて人を雇うときの流れは次の通りです。

  1. 労働条件通知書・雇用契約書を作成
  2. 労災・雇用保険の手続き
  3. 社会保険の加入
  4. 給与・勤怠管理体制の整備

これらを正しく整えておくことで、会社の信頼と安心が大きく変わります。

社会保険労務士は、これらの手続きから就業ルールの整備までをワンストップでサポートします。
「人を雇うのは初めてで不安…」という経営者の方は、ぜひ一度ご相談ください。

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