初めての給与計算で失敗しないために~クラウド給与計算ソフト利用時の注意ポイントを社労士が解説~

こんにちは、社会保険労務士の飯村です。

事業を始めて、いよいよ迎える「初めての給与支払い」。


最近はクラウド給与計算ソフトやクラウド勤怠管理システムを利用する企業も多く、「自動計算だから安心」と思われがちですが、初期設定や確認を誤ると、思わぬトラブルにつながることもあります。

今回は、開業直後・初めて給与計算を行う方向けに、クラウドシステム利用時の注意ポイントを社労士の視点で分かりやすく解説します。

雇用条件が正しく登録されているか確認

クラウド給与計算ソフトは便利ですが、登録内容が間違っていれば、計算結果も間違います。
特に次の点は要注意です。

  • 所定労働時間・労働日数
  • 時給・月給・日給などの給与形態
  • 固定残業代の有無
  • 通勤手当の扱い(非課税限度額)

雇用契約書や労働条件通知書と、システム設定が一致しているかを必ず確認しましょう。

💡所定労働日数とは?

所定労働日数とは、会社があらかじめ定めている「1か月に働く日数」のことです。
月給制の社員の日割り計算
や、残業単価(1時間あたりの賃金)を算出する際の基準となるため、給与計算ではとても重要な要素です。

しかし、開業直後の会社では「特に決めていない」というケースも少なくありません。
その場合は、年間の所定労働日数を先に決め、そこから月平均を算出する方法が一般的です。

例えば、年間休日を120日とする場合、
365日 − 120日 = 245日 が年間の所定労働日数となります。
これを12か月で割ることで、月平均の所定労働日数(約20.4日)を算出します。

この数値をもとに、日割り計算や残業単価を設定することで、給与計算の根拠が明確になり、トラブル防止にもつながります。

クラウド勤怠データはそのまま使わない

勤怠管理システムで打刻している場合でも、確認なしで給与計算に反映するのは危険です。

  • 打刻漏れがないか
  • 休憩時間が正しく控除されているか
  • 残業・深夜・休日労働の区分は正しいか

💡休憩時間の扱いに注意

休憩時間は、労働時間には含まれません。そのため、クラウド勤怠管理システムで打刻されていても、休憩が正しく控除されていないと、実際より長く働いたことになってしまいます。

特に注意したいのが、休憩の「自動控除設定」です。
実際には休憩を取れていない日でも自動的に控除されてしまうと、未払い残業につながるおそれがあります。
初回の給与計算時は、休憩の取得状況と勤怠データが一致しているかを必ず確認しましょう。

残業代の計算ルールを理解する

「残業はまだ少ないから大丈夫」と思っていても、割増率の設定ミスはよくある失敗です。

  • 時間外労働:25%以上
  • 深夜労働:25%以上
  • 休日労働:35%以上

クラウド給与計算ソフトでは自動計算されますが、割増率の初期設定が正しいか必ずチェックしましょう。

💡60時間超の残業と割増率に注意

時間外労働が1か月に60時間を超えた場合、その超えた時間については、割増率が50%以上になります(中小企業も対象)。
クラウド給与アプリでは自動計算されますが、正しい勤怠データが前提です。
打刻漏れや修正忘れがあると、60時間を超えているかの判断を誤り、残業代の計算ミスにつながります。
勤怠締め時には、残業時間の集計が正確か必ず確認しましょう。

扶養者の設定は正しいかを確認する

給与から控除される所得税の額は、扶養親族の人数によって変わります。


そのため、クラウド給与計算ソフトに登録する扶養者情報が誤っていると、源泉所得税を間違えて計算してしまうことになります。

扶養親族は、入社時に提出してもらう「扶養控除等(異動)申告書」で確認します。
配偶者や扶養親族の有無、人数等を正しく反映しているかを確認しましょう。

翌年以降は、年末調整の時に提出してもらう「扶養控除等(異動)申告書」で確認します。

「扶養控除等(異動)申告書」の内容が、ソフトに正しく入力されていないと、源泉所得税の計算がずれたままになってしまいます。

年末調整後も、翌年の給与計算に引き継がれる情報が正しいかを確認することで、翌年以降の計算ミス防止につながります。

社会保険・労働保険の設定は慎重に

初めて従業員を雇った場合、社会保険・雇用保険の加入要件を満たしているかの判断が重要です。
その内容は、正しくソフトに反映されていますか。

  • 社会保険の標準報酬月額は正しいか
  • 業種を正しく入力しているか
  • 雇用保険加入者・社会保険加入者は正しいか

「自動計算=自動で正しい」ではない点に注意しましょう。

💡社会保険料は「何月分を、いつ控除するか」を決めておく

社会保険料は、「当月分を当月控除」か「前月分を当月控除」のいずれかで運用するのが一般的です。
どちらが正しいという決まりはないため、会社としてルールを決めておくことが重要です。

このルールを曖昧にしたままだと、保険料率や標準報酬月額(等級)が変更された際に、どの月の給与から新しい保険料を控除するのか分からなくなってしまいます。
クラウド給与計算ソフトを使う場合も、控除月の考え方を統一して設定・運用しましょう。

支払前の最終チェックを習慣に

初回の給与支払いは、従業員にとっても事業主にとっても大切なタイミングです。

  • 控除額が多すぎないか
  • 支給額に違和感はないか
  • 給与明細の内容が分かりやすいか

「一度支払うと修正が大変」という意識で、必ず支給前チェックを行いましょう。

不安なときは社労士に相談を

クラウドシステムは強力なツールですが、判断が必要な部分は人の知識が不可欠です。
初期設定の確認や、初回給与計算のダブルチェックだけでも、社労士に相談することで安心感が大きく変わります。

初めての給与計算を、トラブルのスタートではなく、信頼関係づくりの第一歩にするために。
無理なく、確実な給与計算体制を整えていきましょう。

タイトルとURLをコピーしました