【社労士が解説】労働条件通知書のチェックポイント|いまさら聞けない&開業したての経営者向けガイド

こんにちは、社会保険労務士の飯村です。

初めて従業員を雇うとき、必ず作成・交付しなければならないのが「労働条件通知書」です。
「雇用契約書と何が違うの?」「ひな形を使えば問題ないのでは?」と感じる経営者の方も多いのではないでしょうか。

特に、2026年4月から健康保険の被扶養者認定における『年収の考え方』が変わることにより、労働条件通知書の重要性はこれまで以上に高まっています。

今回は、開業したての経営者向けに、「いまさら聞けない労働条件通知書の基本とチェックポイント」を社会保険労務士の視点で分かりやすくまとめます。

そもそも労働条件通知書とは?

労働条件通知書とは、会社が労働者に対して、働く条件を明確に伝えるための書面です。
労働基準法第15条では、労働契約を結ぶ際に、賃金や労働時間などの労働条件を明示することが義務付けられています。

口頭での説明だけでは足りず、一定の事項については書面で交付しなければなりません。

(労働者が希望した場合はFAX・メール・SNS等でも明示できます)

労働条件通知書は、事業主から労働者への一方的な通知。雇用契約書は労使双方の合意(署名押印)が必要です(労働者が合意したことが客観的に分かる)。
後々のトラブルを防ぐために、労働条件通知書の内容を網羅した雇用契約書の締結がおすすめです。

クラウド労務システムなら、オンラインで締結できて、一元管理ができます。

【重要】2026年4月から変わる被扶養者認定と労働条件通知書

2026年4月以降、健康保険の被扶養者認定では、
「実際にいくら収入があったか」ではなく、「労働契約で定められた賃金から見込まれる年収」で判断されるようになります。

👉参考:日本年金機構 労働契約内容による年間収入が基準額未満である場合の被扶養者の認定における年間収入の取り扱いについて

このときに判断材料となるのが、労働条件通知書などの客観的な書類です。

つまり、

  • 賃金の書き方があいまい
  • 所定労働時間がはっきりしない

といった労働条件通知書では、被扶養者認定の場面で確認が長引いたり、トラブルにつながる可能性があります。

「とりあえず雇えればいい」では済まされず、正しく書かれた労働条件通知書が求められます

労働条件通知書で必ず確認したいチェックポイント

労働基準法施行規則では、労働条件として明示すべき事項が定められています。
中でも、特に重要なポイントを押さえておきましょう。

① 書面で必ず明示しなければならない事項

以下の事項は、必ず書面(または書面として出力できる方法)で明示する必要があります。

  • 労働契約の期間・更新の基準
  • 就業の場所・従事する業務内容
  • 始業・終業時刻、休憩時間、休日・休暇、残業の有無
  • 賃金の決定・計算・支払方法、締日・支払日
  • 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

これらが抜けていると、法令違反になる可能性があります。

👉参考:厚生労働省 採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。

② 賃金欄は「年収が想像できるか」が重要

被扶養者認定との関係で、特に注意したいのが賃金の記載です。

  • 時給・日給・月給の別
  • 所定労働時間
  • 固定残業代の有無

これらが明確でなければ、見込年収を正しく判断できません

③ 契約期間と更新ルールも忘れずに

有期契約の場合は、

  • 契約期間
  • 更新の有無
  • 更新する場合の判断基準

を明示する必要があります。

この記載があいまいだと、更新トラブルや雇止め問題に発展することもあります。

👉参考:厚生労働省 令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます

就業規則がない場合、「退職に関する事項」の「解雇の事由」について、「就業規則第〇条による」とすることができません。
そのため、労働条件通知書に「解雇の事由」を全て書く or 別紙で添付する、等の対応が必要です。

従業員10人未満の場合には就業規則作成義務はありませんが、就業規則を早めに整えておいた方が安心です。

ひな形を使うときの注意点

厚生労働省のひな形は便利ですが、そのまま使えば安心、というわけではありません

  • 実際の勤務時間と合っていない
  • 運用していない制度が書かれている
  • 就業規則と異なっている

このような状態では、「正しい労働条件を明示した」とは言えません。
ひな形はあくまで参考とし、自社の実態に合わせて調整することが大切です。

💡ひな形との相違箇所チェックポイント

  • 更新の有無を記載していない(丸をつけていない)
  • 変形労働時間制を適用していないのに、ひな形のまま記載されている
  • 有給休暇は一斉付与なのに、入社日基準のままになっている
  • 1日所定7時間で、所定時間外(7時間超8時間以内)も法定超と同じ割増となっている
  • 就業規則と定年再雇用の年齢が異なっている
  • 就業規則に記載がないのに、「詳細は就業規則による」と書かれている

まとめ:労働条件通知書は会社を守る大切な書類

労働条件通知書は、労働者のためだけの書類ではなく、会社自身を守るための大切な書類です。

今後は、被扶養者認定などの場面で、「何が書いてあるか」だけでなく「どう書かれているか」が問われます。

「いまさら聞けない」と感じる今こそ、労働条件通知書を見直す良いタイミングかもしれません。

不安がある場合は、早めに社会保険労務士へご相談ください。

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