
こんにちは、社会保労務士の飯村です。
パートタイム・有期雇用労働者の労働環境の改善と「同一労働同一賃金」の更なる推進を目的に、令和8年10月1日より「同一労働同一賃金」に関する施行規則と告示が改正されます。
今回の改正は、雇い入れ時の手続きから日々の待遇決定、労働者への説明義務まで多岐にわたります。
本記事では、企業担当者が必ず知っておくべき主な変更点と、実務上の注意点を分かりやすく解説します。
対応ポイントは、「労働条件通知書に項目を追加すること」「説明できるようにしておくこと」の2つです。
👉参考:厚生労働省 パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります
1. 雇い入れ時の「労働条件明示事項」が追加
今回の改正で最も実務に直結するのが、パート・有期雇用労働者を雇い入れる際のルール変更です。
現行では、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「相談窓口」の4つの事項を書面の交付等により明示することが義務付けられています。
今回は、新たに「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる」旨を明示することが義務付けられます。
- 具体的な対応: 労働条件通知書に、説明を求めることができる窓口(部署名、担当者名、連絡先など)を記載する必要があります。
👉参考:厚生労働省 モデル労働条件通知書
※更新の際の通知書にも忘れずに記載しましょう。
2. 「同一労働同一賃金ガイドライン」の改正と待遇の点検
どのような待遇差が「不合理」とされるかを示す指針(ガイドライン)が、近年の裁判例を踏まえてより具体化されました。
賞与・退職手当の考え方
賞与や退職手当には「功労報償」や「労務対価の後払い」など様々な性質があります。
正社員との働き方の違いに応じたバランス(均衡)がとれていない場合、不合理と認められる可能性があることが明記されました。
目的と基準の点検
賞与や退職手当には、労務の対価の後払い、功労報償といった様々な性質や目的が含まれます。自社の制度がこれらの目的に照らし、不合理な格差になっていないか確認が必要です。
- 性質・目的の再確認: 自社の賞与・退職手当がどのような目的で支給されているかを明確にします。
- 均衡の取れた支給: それらの目的がパートタイム・有期雇用労働者にも妥当する場合、職務内容等の違いに応じたバランス(均衡)の取れた内容となっているかを点検します。
各種手当・福利厚生の適正化
以下の手当についても、支給基準の明確化が求められます。
- 無事故手当: 業務内容が同一であれば、同一の手当を支給する必要があります。
- 家族手当: 契約更新を繰り返し、継続勤務が見込まれる場合は、正社員と同一の支給が必要です。
- 住宅手当: 転居を伴う異動の有無が支給要件である場合、条件が同じ労働者には同一の手当を支給しなければなりません。
- 福利厚生: 食堂や保養施設などの利用条件において、不合理な格差を設けることは禁止されています。
福利厚生・休暇制度の点検
福利厚生や休暇についても、心身の健康維持や勤続への配慮の観点から点検が求められます。
- 有給の病気休職: 契約更新を繰り返し、継続的な勤務が見込まれる場合は、正社員と同一の病気休職期間中の給与保障を行う必要があります。
- 夏季冬季休暇:正社員と同一の夏季冬季休暇を付与しなければなりません。
- 褒賞: 一定期間勤続した労働者に付与する褒賞は、正社員と同一期間勤続していれば、同一の付与が必要です。
- 施設利用: 食堂、休憩室、保養施設、駐車場などの利用条件(料金や割引率など)において、不合理な待遇差を設けてはいけません。
待遇者を解消する場合は、正社員の労働条件を不利益に変更するのではなく、パートタイム・有期雇用労働者の労働条件の改善しましょう。
企業の対応アクションプラン
改正に対応するために、以下のステップで準備を進めましょう。
- 労働条件通知書の改訂: 「説明を求めることができる旨」と「窓口」の項目を追加する。
- 待遇差の再点検: 賞与、退職手当、各種手当の性質と目的を整理し、不合理な差がないか点検する。なぜこの手当があるのか、手当の趣旨を明確にする。
- 説明方法の工夫: 待遇差を説明する場合に備えて、労働者にとって分かりやすい資料を交付できるように事前に準備しておく。
- 正社員への転換推進: 面談やメールを活用して本人の意向を確認し、制度の導入や実績の公表に努めましょう。
正社員との待遇の相違等について説明する際には、「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい内容の資料を交付する等の方法」のどちらの方法で説明することが必要になります。
賃金決定と評価システムの公正化
賃金の決定プロセスそのものの公正さも点検の対象です。
- 公正な評価の反映: 職務内容、成果、意欲、能力、経験等を公正に評価し、昇給に反映させることが望ましいとされています。
- 共通制度の検討: 正社員と共通の賃金制度や評価項目を設けるなどの工夫も検討すべき事項です。
判断基準における留意事項
待遇差を正当化する理由として、以下の点は「それだけで直ちに不合理ではない」とは認められないことに注意が必要です。
- 正社員人材の確保: 「将来の正社員人材の確保・定着」という目的があることだけでは、直ちに待遇差が正当化されるわけではありません。
- 定年後再雇用: 定年後に継続雇用された有期雇用労働者であるという理由だけで、不合理な格差が許容されるわけではなく、個々の待遇の性質・目的に照らして判断されます。
待遇改善の進め方
- 不利益変更の回避: 待遇差を解消する際、正社員の労働条件を不利益に変更して合わせるのではなく、パート・有期労働者の条件改善を図ることが求められます。
- 無期転換時の点検: 有期雇用から無期雇用へ転換する際は、あらかじめ正社員との間の待遇差を点検し、不合理な違いがある場合は確実に解消する必要があります。
これらの点検を通じて、自社の待遇体系がガイドラインに沿ったものになっているかを精査し、必要に応じて就業規則の改訂や賃金制度の見直しを進めることが重要です。
まとめ
令和8年10月の改正は、単なる手続きの変更に留まらず、労働者に対する透明性と公平性をより一層求めるものです。
早めの点検と準備を行い、トラブルのない職場環境を整えていきましょう。

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